シリコン・ファウンドリは、プロセス技術の微細化を促進し、最近では7nm-10nm に達しています。このような微細化プロセスをスマートフォン用のシステム・オン・チップ(SOC)などに適用することにより、さらなる高性能化を実現しながら、より低い消費電力も可能します。このとき、1.8V信号電圧のみを使うことにより、微細化プロセスでのSOC開発を容易にすることができるのです。

SD標準規格ができた2000年以来、SDメモリカードは、標準インターフェイスとして3.3V信号電圧を使い続けてきました。SD3.0では、シングルエンド方式のリムーバブルカードインターフェイスとしては究極的な性能を持つUHS-Ⅰと呼ぶバスモードが追加されました。UHS-Ⅰでは、1.8V信号電圧を採用することにより、信号の立ち上がり/立ち下がり時間を短縮し、さらにEMIの低減を可能にしています。しかし、UHS-ⅠSDメモリカードは、初期化のときに依然として3.3V信号電圧が必要です。他の低電圧インターフェイス方式として、UHS-Ⅱを使うことができますが、ホスト機器は2列目のパッドを持つコネクタと、1.8V電源を実装する必要があります。そのためUHS-Ⅰより高速性が必要なアプリケーション向けのソリューションと考えられています。

最新のSD6.0仕様では、LVSカードタイプが追加されました。LVSカードは、3.3V/1.8V両方の信号電圧をサポートし、ホストが使用する信号電圧の自動検出機能を持っています。LV規格で、LVSカードは3.3V信号電圧を使用する在来ホストとの互換性維持が求められます。また、LVSホスト機器が微細化プロセスを用いたSOCを容易に開発できるように、カード電源の投入直後から、直接1.8V信号電圧のUHS-Ⅰモードで起動することができます。

低信号電圧インターフェイスを実装するカードタイプ

LVSカードは、在来ホストとの互換性があり、またUHS-ⅡやUHS-Ⅲホストのサポートも可能です。表1は、SD6.0で定義されたLVSカードタイプを示しています。

LVS Types Description
LV50 最大バス性能が50MB/sのUHS-I SDメモリカード
LV104 最大バス性能が104MB/sのUHS-I SDメモリカード
LV156 最大バス性能が156MB/sのUHS-II SDメモリカード
LV624 最大バス性能が624MB/sのUHS-III SDメモリカード

表1: LVSカードタイプ

LVSカードは、3.3V信号電圧または1.8V信号電圧のどちらを用いてもコマンド/レスポンスによるコミュニケーションが開始できるように設計します。どちらの信号電圧を選択するかは、電源投入後に『LV認識シーケンス』と呼ぶ、特別な手順が実行されたかどうかで決定します。具体的には、LVSカードは、SDCLK端子に供給されるクロック周期と、クロックエッジの信号レベルを測定することで、LVSホストが接続されているかどうかを認識します。一方、LVSホストは、LV認識シーケンス中の信号レベルによりLVSカードが接続されているかどうかを判定できます。

ホストとカードの組み合わせ

  • 図1は、ホストとカードの組み合わせを示します。
    • LVSカードは、接続に関して、すべてのSDホスト機器と完全なバックワードコンパチビリティを持ちます。在来ホストとは3.3V信号電圧を使い、LVSホストとは1.8V信号電圧のみで接続します。
    • LVSホストは、基本的に新しいLVSカードだけが使用できますが、例外として、UHS-Ⅱモードで接続する方法があります。これは、LVSホスト機器がUHS-Ⅱをサポートしていて、かつユーザがUHS-Ⅱカードを用いた場合に限ります。

『LV』シンボルの表示により、ユーザは、LVインターフェイスをサポートしたSD製品を識別することができます。LVSホストは、LVシンボルを製品、パッケージまたはマニュアルの何れかに表示します。LVSホストユーザは、LVシンボル表示のあるSDメモリカードを使う必要があります。つまりLVシンボル表示のあるホストとカードを組み合わせで用いる必要があります。他方、LVSカードは、LVシンボルの有無に関わらず、どのSDホストでも使うことができます。

ホストとカードの組み合わせ

図1: ホストとカードの組み合わせ