機器製品において最も有効な部品が概して、決してユーザーの目に触れない製品であることがあります。そのような製品を使用せずに装置を組み立てると適切に動作しない場合があり、SDメモリカードもそのような製品であると言えます。SDメモリカードはフォームファクタが小さい拡張可能なメモリ技術製品として支持を集めており、現在では多くの産業向けのアプリケーションに使用されています。

SDアソシエーションは、拡張可能なSDメモリカードの規格を制定することでこの技術の進歩に貢献し、互換性を持つメモリカードやデバイスを製造するメーカーは、この規格に準拠しています。スマートフォン、自動車、コンピュータ、カメラ、テレビ、小型ナビゲーション機器など、さまざまな製品カテゴリーのメーカーがSD規格を採用しています。SDアソシエーションは2000年の設立以来、メンバー企業の数を約1,000まで伸ばしました。

SDメモリカードが最適なストレージオプションを提供している最新アプリケーションのいくつかを次にご紹介します。

モノのインターネット(IoT)

先進国においてIoTは既に生活の一部となっており、IoTがどれだけ日常生活に影響を与えているか把握していない人が大勢いるほどです。例えば、毎秒127件の新しいものがインターネットに接続されていると、ストリンギファイのCTO、デイビッド・エヴァンス氏は述べています。医療センター、セキュリティ・監視アプリケーション、鉄道、航空輸送、環境状況モニタリング、災害管理、小売りなど、さまざまな産業分野でIoT機器が使用されています。

実際、2025年までにIoT産業は合計で年間3兆9,000億ドル~11兆1,000億ドルの経済効果をもたらす可能性があると、マッキンゼー・アンド・カンパニーの2015年 報告書 が示しています。またこの報告書では、IoT技術を使用する企業は、適切なシステムとプロセスを開発し、その価値を最大化する重要な役割を果たすだろうと予測しています。

IoTシステム間の相互換運用性はパズルの重要なピースとなっています。報告書が示すように、予測される経済価値全体の40%を実現するには、相互換運用性が必要です。

機器間の通信を中断してはいけません。データがわずか数分失われただけでも、意思決定に障害を生じる可能性があります。通信障害は追加費用を生じさせるほか、安全性を損なう場合もあるため、通信の断絶は許されません。産業用IoTアプリケーションがさまざまな部門に影響を与えることを考慮すると、通信障害が原因で壊滅的な状況となる可能性があります。

小さいスペースに安全かつアクセス可能な方法でデータを保管する際に、通信障害のリスクが高いという側面を克服することが課題となっています。多くのIoTデバイスは非常に小型です。幸い、SDカードメモリはサイズが小さいものの信頼性は高く、パフォーマンスが安定しています。また大容量のメモリ増設が可能なため、小型のデバイスには文字通り完全にフィットします。

こうした特徴のためSDメモリカードは、リモートエリアやアクセスできないエリアなどに配置されたものも含め、広範囲なIoTアプリケーションに適応できるほど柔軟性が高くなっています。さらに高温に対する耐性もあり、これは多くのIoTアプリケーションに関して考慮すべき重要な点となっています。最後に、技術進歩によって、SDメモリカードの性能は常に拡張されています。例えば、ユーザーはカード上で、信頼性が向上したエラー緩和アルゴリズムを実行することができます。

The Next Frontier: New Applications for SD Memory Cards

車載用

スマートカーはユーザーの間で幅広く受け入れられるようになりました。マッキンゼー・アンド・カンパニーの最近の報告によると、昨年、接続性がさらに高い自動車メーカーに買い替えようと希望したユーザーの数は、37%増加したそうです。そして現在、3分の1近くのユーザーがサブスクリプションベースのモデルを購入して接続サービスを利用したいと考えています。これは前年から21%の増加となっています。

スマートカーには確かに多くの長所がありますが、極端な温度下ではアプリケーションのパフォーマンスに悪影響を与える場合があるので、車載用機器にとって問題となります。極端な温度に晒された場合、スマートカー技術はさまざまな機器の故障を起こりやすくし、これが記憶装置に影響を与える場合があります。例えば、SDメモリカードに地図を保存しているGPSシステムのナビゲーション機能は、厳しい条件下で使用するとデータ損失が生じる可能性があります。

技術の進歩により、メーカーは厳しい外部条件にも耐えられるメモリカードを生産できるようになりました。メモリカードを極端な温度で動作させ、耐久性を試験し、常に障害許容力を向上させようとしています。

車載用アプリケーションは、保険会社への提出目的の運転記録、車載インフォテイメント、2D/3Dナビゲーションとマッピング、直感的な認識を可能にする安全運転支援システム、ロジスティクスおよびフリート管理、自律制御自動車など、さまざまな用途に使われています。このため、メモリカードなどの記憶装置に素早く確実にアクセスする必要のあるデータが大量に生成されます。

コンピュテーショナル・フォトグラフィー

最近では、ユーザーのほとんどがアマチュア写真家と言えるでしょう。自撮り棒を持って撮影する場合もあり、撮影したものはソーシャルメディアで共有しています。こうしたユーザーがカメラ付き携帯電話の精巧さを疑問に思うことはめったにありません。

一方でプロの写真家は、写真業界で、より新しくエキサイティングな進化を享受しています。それは、光学的処理の代わりにデジタル計算を使用する、デジタル画像のキャプチャー・処理技術であるコンピュテーショナル・フォトグラフィーです。これは間もなく写真業界の標準になるかもしれません。コンピュテーショナル・フォトグラフィーは新しい分野のコンピューターグラフィックス画像であり、より良い写真が撮影できるだけでなく、以前は不可能だった方法で画像をとらえることができます。

この高度な写真撮影技術では、写真の軸の移動、パノラマ写真の作成、画像の3D変換、光が弱い場所における高品質写真の撮影、水平方向と垂直方向に加えて光の深度計測など、魅力的な性能を多く提供しています。コンピュテーショナル・フォトグラフィーには幅広い長所があるため、市場のさまざまな分野、そして写真を撮ろうとするすべての人に広く影響を与えることになるでしょう。

さらに、コンピュテーショナル・フォトグラフィーではソフトウェアを使用するため、必然的に大きなファイルを保存するストレージ容量にも影響がでます。高度な機能を最大限に活用するためには、適切なストレージソリューションを使用することが重要です。コンピュテーショナル・フォトグラフィーはソフトウェアをベースにしているため、記録装置を拡張する必要がでてくる可能性が高くなります。その結果、ユーザーはたくさんの写真を保存する性能を持ったカードが必要になるでしょう。

コンピュテーショナル・フォトグラフィーをサポートするデバイスでは、SDメモリカードを使用することでデバイスのストレージ容量を増加する柔軟性がもたらされます。また、ユーザーは高速処理能力を持つカードを購入することで、ストレージ容量を増加するだけでなく、書き込み/読み込み速度も向上することができます。カメラメーカーは、ユーザーのこうした希望を理解し、デバイスにメモリカードスロットを搭載し始めました。

スマートフォン

SDメモリカードとスマートフォンの間には物語があります。スマートフォンが人気を得て以来、メーカーの中には、スマートフォンの設計デザインに追加ストレージを組み込み小売価格を上げることで、目先の利益を上げ、デバイス交換を促進しようとした会社もありました。

しかしそうすると、ユーザーはストレージ拡張ができなくなってしまいます。手ごろな費用での解決策はなく、ストレージが足りなくなったらユーザーはスマートフォンを買い替えていました。単純にmicroSDメモリカードを使用して、既存のスマートフォンのメモリを増設することはできなかったのです。データ需要が着実に高まる中、この費用の増加がユーザーの不満を募らせました。

ユーザーの要求に応え、最近では多くのメーカーがスマートフォンにmicroSDメモリカードスロットを搭載しています。メーカーはスマートフォンの製造コストを削減でき、ユーザーに対して、ストレージのニーズにあわせてカードをアップグレードしたり交換したりする柔軟性を与えられるため、現在では多くの機種がmicroSDメモリカード対応となっています。

この傾向を示す顕著な例が、2015年9月に発表されたGoogleの新しいAndroid Oneスマートフォンです。費用対効果が高いこのスマートフォンは、世界で最も急成長しているスマートフォン市場であるインドに向けたものです。このデバイスの価格はわずか105ドルと、注目に値します。なぜなら、他の発展途上国と比較してインドにおける平均的な端末費用は高いからです。何よりも、米国で行われているようにスマートフォンの購入時に通信事業者と契約することで端末料金が安くなるということがないので、ユーザーの支払う端末価格は通常何百ドルにもなります。

セルラーネットワーク事業者が提供する無制限データプランの排除に対抗するために、発展途上国ではこの低価格スマートフォンが選ばれる傾向が続く見通しです。ユーザーとしては、microSDメモリカードを使用してさらに多くのデータを保存することで、より費用を削減でき、関連費用も下げることができます。

前述のアプリケーションすべてを考慮すると、SDメモリカードがさまざまな最新アプリケーションに適切であることは明確です。SDメモリカードは小さくても強力で、最も厳しいストレージ要求すらも満たすパワー、パフォーマンス、拡張可能なメモリとして提供されています。

ジャニス・シュウはSDアソシエーションボードメンバー兼シリコン・モーション・インク、拡張可能ストレージチーム担当プロダクトマーケティングディレクターです。
(メールアドレス:Janice.chiu@siliconmotion.com

©SD Association. All rights reserved. SD、SDHC、miniSDHC、microSDHC、SDXC、microSDXCのロゴはSD-3C LLCの登録商標です。