モノのインターネット(IoT)が世界を席巻しています。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの報告書 では、IoTのグローバル経済に与える影響は2025年までに6兆2,000億ドルに達すると推測されています。同レポートはまた、接続デバイス市場規模が2020年までに200億個または300億個までに増加するとも予測しています。

IoTデバイスの使用は過去数年で急激に増加し、今では日常生活の一部となっています。IoTシステムは、ユーザー、マシン・ツー・マシン、産業用マシン・ツー・マシンといった3つのカテゴリーに大別できます。産業用としては、医療センター、セキュリティおよび監視用途、鉄道、航空、環境管理、防災および小売りなどでよく利用されています。

産業用IoTアプリケーションが、こういったさまざまな部門に関係していることを考慮すると、不具合 が発生すれば深刻で壊滅的な問題になるため、消費者や従来のマシン・ツー・マシン向けのIoTと比較しても、このカテゴリーのIoTアプリケーションに対する要求は非常に高いものとなっています。こうした高度な機能はクライアント/サーバー間のみならず、むしろネットワーク上でノードがピアとして作用し、それぞれが意思決定をし、ほかのノードにステータスをレポートする必要があります。

この様な環境の中では、ノード間の通信障害は許されません。また、こういったシステムでの情報処理速度は、人間よりもかなり高速であることが多いため、人間の干渉なしに高い信頼性と安全性をもって情報処理を行えることが必須です。わずか2、3分の停止時間がデータの消失につながりかねず、このような通信障害は追加費用を生じさせ、さらにはシステムにつながる環境を危険にさらすことにもなりかねません。

この様な高いリスクと高い性能が求められるという傾向は産業用IoTデバイスとは切っても切れない性質です。またIoTデバイスは非常に小型の場合が多いため、制限されたスペース内に安全にアクセス可能な方法でデータ保管するという課題が開発を制限しています。

最適な組み合わせ

幸いなことに、こうしたデバイスの需要には、差し替え可能なデジタルストレージデバイスであるSDメモリーカードが 非常に適しています。

  • SDメモリーカードは小型で、IoTデバイスで採用できる数少ないソリューションの1つです。フルサイズとmicroSDという選択肢があります。
  • SDメモリーカードは信頼できる安定した性能で、省電力をも実現します。こうした特徴は特に、離れた場所や電波のアクセスがないエリアにあるアプリケーションに有効です。
  • SDメモリーカードは動作が環境温度に左右されにくいといった、高い信頼性があります。
  • ユーザーはSDメモリーカードによって、信頼性を強化し、誤差緩和アルゴリズムを実行することができます。
  • SDメモリーカードは今やストレージソリューションとして確固たる地位を築きました。そして様々なデバイスの技術進歩に合わせて、現在も絶え間なく機能を拡張しています。

もちろんどんなソリューションにも言えることですが、SDメモリーカードが直面する問題点なども出てくることでしょう。しかし、ユーザーはこうした障害を乗り越えることができます。

技術問題に対応して

IoTデバイスは休止 することなく 常に稼動 させる ことが多く、そのためセンサーはデータを秒単位で記録する必要があります。SDメモリーカードから関連デバイスへのデータ送信がわずかに遅延した場合でも、データ破損の原因となりえます。こうしたデータフロー障害の発生により、デバイスが正常に機能するために必要である重要な情報を損失するのです。送信中のデータが失われると、その結果システムは最新の情報を得ることなく機能しようと して深刻な結果を引き起こす場合があります。

この問題に対する単純なソリューションは、データ損失をすぐに補うことです。デバイスにはバックアップバッテリーが搭載されているはずですが、そのより先進的なオプションがSDメモリーカードで、メーカーは、以前の状態に復旧するためのバックアップコードをカードにプログラムすることができます。これはPCやMACのシステムクラッシュ対応策に似ています。

読み込み/プログラム障害といったカードアーキテクチャ内の内部障害は、異なる種類の問題です。こうした現象は、特にNAND型フラッシュメモリーを使用するSDメモリーカードなどのデバイスで発生します。この問題は、ターゲットセルから周辺セルへの電荷の漏れを防止する安全策が実施されていない場合に、書き込みデータを含むアーキテクチャ内の列にある隣接セル全体に電荷漏れが起きた時に発生します。周辺セルが既に電荷を帯びている場合は、電荷の漏れはSDメモリーカードの寿命を短縮 してしまいます。

監視ソリューションも障害の防止に有効です。最初にカード内の特定のアルゴリズムがコントローラーとして動作し、周期的にセルをチェックし、以前と比較しセルの状態に変化がないことを確認します。次に、意図しない変更がある場合は、自動更新によりエラーを修正し、ターゲットセルが電荷を受けとり、データが適切であるようにします。こうした機能を活用するためには、こうした技術を設計に組み込んだベンダーからSDメモリーカードを購入する必要があります。

厳しい環境下での正常な動作

SDメモリーカードは産業用IoTアプリケーションのデータストレージとして使用される際に、極端な温度、湿度、圧力、機械的振動、衝撃、放射、高度などといった厳しい環境でも正常に動作する必要があります。
 
高温環境で動作しなければならないスマートカー(近未来型自動車)は、IoTアプリケーションが厳しい条件下に有ることの代表的な例です。人気が高まることで、スマートカーは厳寒の北方ロシアから猛暑のアラビア半島までさまざまな場所でより一般的に使用されるようになることが見込まれています。スマートカーが常に厳しい温度条件に晒される場合、データ損失は様々な機器障害の原因となります。

温度がカード内 フラッシュメモリーの データ維持に 影響するため、こうした障害が起きる可能性があります。厳しい条件は電荷を維持する能力を不安定にするため、データを維持する能力にも悪影響を与え るのです。

アプリケーション特有の 障害が生じる場合もあります。SDメモリーカードを経由して地図を保存するGPSシステムのナビゲーション機能は、苛酷な温度条件から悪影響を受ける場合があります。その結果、カリフォルニアで休暇中の人が、旅行中に地図アプリケーションを使用でき なくなった、ということもあるでしょう。

SDメモリーカードメーカーは苛酷な温度条件下での耐用試験を重ね、先端技術による厳しい外部条件にも耐えられる強固なカードを生産できるようになりました。ユーザーが産業用IoTアプリケーション向けのストレージソリューションを求める場合は、消費者向け電気機器用に製造されたカードは選択しないでくさい。消費者向けの製品を作るメーカーでは通常、製品設計時に苛酷な条件下での使用を考慮していないためです。

産業用IoTアプリケーション向けのSDメモリーカードは、アプリケーション自体と動作環境を主に考慮しながら明確に選び分ける必要があります。しかしどんなアプリケーションを利用する際にも言えることは、長持ちする製品を設計する優良なメーカーを選ぶことです。

ダニー・リンはATPのバイスプレジデント兼SDアソシエーションボードメンバーです。ATPにおいて、グローバルサプライ戦略パートナーシップおよびアライアンスを担当しています。他のSDAボードメンバーと共に、IoT、産業/組み込み分野、医療および車載用など、従来と異なる市場におけるSDメモリーカードの継続的な発展を推進しています。お問い合わせは DannyL@us.atpinc.com宛てに電子メールを送信してください。

サウラブ・パンデはATPの既存および新規戦略的顧客に対するビジネスデベロップメント、ソリューションエンジニアリング、テクニカルマーケティングを担当しています。お問い合わせは SaurabhP@us.atpinc.com宛てに電子メールを送信してください。

©SD Association. All rights reserved. SD、SDHC、miniSDHC、microSDHC、SDXC、microSDXCのロゴはSD-3C LLCの登録商標です。